エバース(龍宮隊長/さよ)

龍宮隊長/さよ
「どうも〜」

龍宮隊長
「龍宮と相坂でエバースだ。
 よろしく」

  さよ
「2025年、ダントツで気になるニュースがあるんですけど」

  龍宮隊長
「ほう、聞こうじゃないか」

  さよ
「各地で出没する熊。
 今年はこれに尽きると思うんですよね」

  龍宮隊長
「ああ、確かにな。
 北海道、東北を中心に東日本でこれでもかというほどに
 人里にまで降りてきていたようだ」

  さよ
「今年の漢字にも選ばれちゃってますし」

  龍宮隊長
「それだけ頻繁に話題になっていたということは言えるな」

  さよ
「そこでですね、被害に遭われる方がこれ以上増えないように、
 私たち2人で駆除に赴こうかと考えているんです」

  龍宮隊長
「…ん?」

  さよ
「国もね、警察や自衛隊を動かして対策に乗り出していたりするんですけど、
 やっぱり短期間で必要な訓練が積めるかという部分で怪しさがあったりですね」

  龍宮隊長
「ん、ああ、それは言えるな」

  さよ
「ハンターの方に頼るにしても、
 担い手が少ない上に高齢化が進んでいますし、
 それでいて熊は増え続けていますからね」

  龍宮隊長
「まぁ、それも間違いのない事実ではあるな」

  さよ
「そうなると、もう、ね。
 私たちの出番なんじゃないか、と」

  龍宮隊長
「…ん?」

  さよ
「…え?」

  龍宮隊長
「いやいや、それがわからんのだ。
 『私たちの出番』?」

  さよ
「そうですけど?」

  龍宮隊長
「自治体と専門家に任せるべき事案に、
 何故一般の女子中学生が」

  さよ
「一般の女子中学生?」

  龍宮隊長
「一応、そうだろう」

  さよ
「え、何ですか、それ、ボケですか?」

  龍宮隊長
「いやいやいや、そういうのやめてくれ」

  さよ
「片方は85年前に召されてる地縛霊で、
 もう片方は魔族とのハーフで
 プロフィールに書かれてる生年月日に疑惑しかないという2人が」

  龍宮隊長
「一般の女子中学生」

  さよ
「もうボケですよね、それ」

  龍宮隊長
「我々の詳細についてあっさりと詳らかにしているが
 そういう体で日頃生活してるのだから
 そこはボケだ何だという話にしない方がいいだろう」

  さよ
「まずもって隠し事が良くないですし、
 熊の駆除という人のために役立つことをするにあたっては
 明らかにしておいた方がいい情報だと思うんですけど」

  龍宮隊長
「…確かに、後者においては一理あるな」

  さよ
「でしょ?」

  龍宮隊長
「いや、『一理あるな』じゃないぞ。
 何故私は熊の駆除に赴く前提で言い分を受け入れてるんだ?」

  さよ
「ビジネスライクを装いながら
 世のため人のために動く龍宮さん、素敵だと思いますよ」

  龍宮隊長
「装っているわけではないが、説得に揺らいでいる自分を隠せないな」

  さよ
「『子供たちに笑顔を』ですよ^^」

  龍宮隊長
「エバース佐々木がやりそうにない言いくるめ方と
 私の過去に絡んだ話を持ち出すのはやめろ」

  さよ
「考えてもみてください」

  龍宮隊長
「おい、無視をするな」

  さよ
「熊の駆除に関しては、
 狙撃のスペシャリストである龍宮さんがうってつけの存在なんですよ」

  龍宮隊長
「それは否定出来ないが、『私たち』と言ったよな?
 相坂はどう関わるつもりなんだ?」

  さよ
「そこです。
 作戦をお伝えしましょう」

  龍宮隊長
「聞こうじゃないか」

  さよ
「まず、熊の目撃情報が出たら2人で現場に急行します」

  龍宮隊長
「ふむ」

  さよ
「そして、熊の目の前に実体の無い私が歩み出て視界に入り、
 熊の注意を引き付けます」

  龍宮隊長
「ほう」

  さよ
「そして、周囲への警戒が薄まった熊に対して、
 少し離れたところから龍宮さんがズキューン!で駆除完了です」

  龍宮隊長
「至って普通だが理に適った作戦ではあるな」

  さよ
「弾丸に色んな細工が出来る龍宮さんの狙撃であれば
 跳弾により二次被害の心配もありませんし、
 市民の方の避難が完了してからといった感じで時間をかけることなく
 悪・即・斬出来るんですよ」

  龍宮隊長
「熊そのものは悪ではないし狙撃だから斬ではないがな」

さよ
「どうです?
 私たちが赴くべきだと思いませんか?」

  龍宮隊長
「諸々の仕事に比べて難度も低いし、
 これならさしたる報酬でなくともやってもいいかも知れないな」

  さよ
「それなら!」

  龍宮隊長
「ただ一つ問題があるとすれば」

  さよ
「問題があるとすれば?」

  龍宮隊長
「我々の素性を明らかにしたところで
 一般市民が理解して受け入れるとは思い難いし、
 むしろ我々が捕獲や排除の対象に成り得るということだろうな」

  さよ
「はっ」

  龍宮隊長
「麻帆良学園という特殊な環境に浸っていると気付きづらいことだがな」

  さよ
「ということは、私たちは一生闇に隠れて生きるしかないのでしょうか」

  龍宮隊長
「相坂は既に死んでいるだろうが」

  さよ
「てへ」

  龍宮隊長/さよ
「どうも、ありがとうございました」