menufootballmatch



讃岐 2−2 熊本
J3/第24節
(19/09/29:Pikara)
DAZN



讃岐スタメン

________木島徹_______
重松___福家____森川___中村
________佐々木_______
荒堀____麻田__竹内____柳田
________清水________



熊本スタメン

______北村__三島______
八久保_____________中原
______上村__中山______
片山____鈴木__小笠原___黒木
________山本________



対熊本仕様のサッカーを実装した讃岐と、それに苦しんだ熊本。
後半になり讃岐が更にギアを上げると、
互いに人と配置を変えながらの出し抜き合いに。
あまりJ3では観ない類の試合は、
優勝戦線に絡む熊本が終了間際に執念で同点に持ち込んでのドロー決着となった。



【0分〜45分】
0分〜45分

今季の讃岐のように「左肩上がり」「3+1」で組み立てを始めたい熊本。
鍵となるのは「1」の上村。
よって、讃岐は彼にボールを入れさせないことを第一とし、
ハーフウェーまで撤退して図のような配置で守ることを選択した。

■1
サークル幅程度にしか幅を取らない熊本の「3」に対し、
讃岐はCFとIH2枚を前に立たせ、「1」上村へのパスコースを切る。
熊本の「3」の間で回るボールは距離が短いため、
讃岐の3枚が追うのも用意でスタミナの消耗も少ない。
熊本はこの「3」の距離をもっと開いた状態で回せれば
讃岐の守備に綻びを作るのも容易だったと思うのだが、
黒木、小笠原、鈴木にそこまでの技術が無いのかな。
とにかく、熊本の「3」は上村に入れられない状態に苦しみながら
何となく横パスを回したり、時折引いてくる選手に預けたりして
讃岐の守備をズらそうと試みる。

■2
上村を使えない中で熊本が次の優先順位としていたのは「左肩上がり」となった片山だった。
彼の突破からのクロスは武器たり得るものであり、
事実、熊本の先制点は最初に彼にボールが入ってから狙い通りのクロスにより生まれている。
彼にボールが入ることをケアするのは中村の役割となった。
まずはHSに入っている八久保をケアしながら、
「3」でのボールの回り方や片山のポジショニング(引いて受けようとする)によって
八久保を捨てて片山への距離を詰める。
片山がボールを受ける(受けそうになる)位置によっては柳田への受け渡しも発生し、
中村は常に微妙な判断を迫られ、決断を下さねばならなかった。
(更に受け渡したあとはどの位置に戻るのか、誰を捕まえに行くのかという判断もある)
受け渡したあとのポジショニングに難は見られたものの、
中村はこの難しいタスクを概ね上手くやっていたように感じる。
困った熊本は小笠原、鈴木がミドルパスで片山に一発で通そうとするも、
これには最初から柳田が対応。
中村が「これは柳田任せ」という判断を簡単に下せるので、
このアイデアは攻撃だけを考えれば悪手だった。
(短く繋いでるうちに讃岐の選手に引っ掛かってしまいショートカウンターを喰らうことを避ける、
 という点では悪くはなかったが)

■3
中央(上村)、左(片山)が上手く使えない熊本の、次の優先順位は右サイド。
中山がHS低い位置に降りていき「3」からボールを引き取ることでくことで
起点になろうと試みるも、
これには重松が本来のマーカーである中原を捨ててチェックに出る。
この際、荒堀が中原のケアのために縦にスライドすることで
熊本の「3」は出しどころが見つからない状態が続くこととなる。

こうして、早々に先制点を奪えこそしたものの、
熊本は終始「持たされる」前半となった。

讃岐は、自陣に引いてからの守備で、
且つ、熊本の後方の選手に持たせる時間を長くすることが出来ていたため、
奪ってから熊本陣内の広大なスペースを活かした速い攻撃を出せていて、
攻守に狙い通りのサッカーが出来ていたと思う。

とはいえ。

時間を追うごとに讃岐の守り方を理解した熊本と、
主に木島徹と福家の守備意識の低下とにより
(黒木、小笠原から木島徹と福家の間を通されて上村に渡るパスが4本はあった。
 木島徹と福家の距離感は試合開始時とさほど変わっていなかったので、
 いわゆる「アリバイ守備」になっていたと言えるだろう)
前半の深い時間には
「このままだと熊本がいずれこじ開けることになるだろう」という雰囲気が漂っていた。


【46分〜57分】
46分〜57分

受け身のままではジリ貧となりそうな雰囲気を感じ取ったのか、
サークル幅にしか広がらない熊本の「3」に勝機アリと踏んだのか、
讃岐が、前半の「受け」の守りから「奪いに行く」守りへと変化する。

■1
熊本の「3+1」に対しCF+2IHで「1」へのコースを消して「3」に持たせていた讃岐が、
最もケアすべき「1」上村に森川をマンツーマンで付け、
福家を前に押し出して木島徹と共に熊本の「3」に圧力を掛けていく。
熊本の「3」は近距離であるため、
黒木←→小笠原のパス交換には福家が、
小笠原←→鈴木のパス交換には木島徹が、
それぞれ追い続けることが可能。
前半は「受け」の讃岐を前にゆったりボールを動かしていた熊本の「3」は
讃岐のこの変化に慌てることとなり、
50分までの5分間で立て続けに3度も自陣深くへの侵入と好機創出を許してしまう。

■2
福家、木島徹の圧力を嫌って黒木や鈴木が横にドリブルで逃げれば、
重松、中村がマーカーを捨てて圧力を掛けに前に出ていく。
(この際、佐々木と荒堀(柳田)はしっかりとスライドしてボールに近い熊本の選手を捕まえに出る)
黒木、鈴木は逃げた先でも圧力を受けて苦しむことに。


【57分〜68分】
46分〜57分
讃岐の変化を受けて熊本のベンチが動く。
ここまで左HSで有効な動きが出来ていなかった左SHの八久保をトップに上げ、
トップの北村に代わって高瀬を左SHへ投入し
片山が担っていた左サイドの高い位置で幅を取る(そしてクロッサーになる)役割を与え、
片山には八久保が担っていたビルドアップ時に左HSに入る役割を負わせる。
熊本ベンチが見切っていたのか、はたまた偶然の産物か、
木島徹がガス欠を起こすタイミングと見事に重なって、
高瀬がクロスまで持ち込む形が表れ始め、盛り返しに成功する。

■1
片山がHSでより内寄りだったり高い位置だったりと細かくポジションを変える。
中村の最初のマーカーは片山になるので、基本的に片山に付いてポジションを修正する。

■2
片山の動きと中村がそれに付いていくのを見て、鈴木がドリブルで左に逃げると、
片山が中村を伴って移動したことで空いた高瀬へのパスコースが視える。
彼を追っていた木島徹のガス欠も重なり、鈴木は容易に高瀬へとパスを送ることが出来る。
中村は途中でこの仕組みに気付いた節があったが、
片山を離してしまうと鈴木から片山へ縦パスが入るので、片山へと付いていっていた。
(佐々木が片山へ寄せればいいという考えもあるが、片山が左利きのため、
 佐々木を背負って縦パスを受けてもワンタッチで高瀬へ展開出来てしまう。
 結果、クロスが容易に入る展開でバイタルを埋める人間が居なくなってしまうので、
 佐々木が片山へ寄せるのは得策ではないだろう。
 讃岐ベンチや佐々木が気付いていたのかはわからないが、
 結局、HSで嫌な位置取りをする片山に対して、佐々木が中村からマークを引き受けることは無かった)


【68分〜90分】
46分〜57分
熊本の変化と木島徹のガス欠を受けて、
讃岐は木島徹に代えて木島良を、まさかの右SHに投入。
中村はトップへとポジションを変えた。
木島良が右サイドで起用された理由は正直わからないのだが、
鈴木を追う選手が木島徹から中村になり、圧力が持続することを見越していたのだろう。
守り方は人(片山)に付くのではなく、
前に出て片山、高瀬の両方へのパスコースを消すというものだった。
結果、木島良が良い形でボールを持って仕掛ける場面が投入後立て続けに訪れ、
高瀬投入で盛り返した感のある熊本を逆に押し返し、雰囲気を変えてみせた。

一方の熊本はボールを受けることもままならないでいた中原を諦めて、伊東を投入。
(讃岐が木島良を投入したわずか2分後のことなので、讃岐云々ではない決断でしょう)
伊東は右サイドに張っていた中原とは異なり、自由に動き回る。
讃岐にも消耗の色が出始めており
熊本の「3」からボールが出てくるようになっていたため、
伊東は至るところでボールを受けては讃岐守備陣に混乱をもたらすようになる。

しかし、自由なポジショニングは表裏一体。
奪われた際に然るべき場所に選手が居なくなるわけで、
伊東は攻撃で効果的である一方、
試合がオープンになっていくことに大きく加担するのであった。

讃岐は福家に代えてペ・スヨン、熊本は八久保に代えて原を投入し
それぞれゴールを狙うが、
熱戦を締めるゴールは熊本の右CKから生まれることとなった。





讃岐。
図解してきたように、対熊本仕様の守り方は一定以上奏功した。
「受け」と「奪いに行く」の2段階を用意出来ていたこと、
熊本の変化(片山のポジショニング)に対しても即座に修正が施せたこと、
とても良かったと思う。

やれば出来るじゃないか…。

攻撃に関しても熊本陣内のスペースを活かしたものが中心となり、
(上村監督としては本来志向するものじゃないのかも知れないけど)
守備とのリンクがきちんとなされていた。

個人的に凄く今日の試合を象徴してるなと思っているのが、
48分の荒堀のプレイ。
ミドルサードに入るかなくらいの位置で讃岐DFラインがボールを回す中で
熊本の前線が猛然とプレスを仕掛けてきたんだけど、
近くに繋げないか探った上で、
なかばボールを捨てるかのように、
熊本陣内のサイド深くに大きく蹴り出したんだよね。
「無理に繋がなくても、守り直せばOK」
という、
今日のやり方に対する自信とそれを貫くという意志が感じられた。

勝てるぞ、と思ったよ。


中村が今日のMOMということに文句を言う人はいないでしょう。
守備面で難しいタスクを追いながら、
カウンターではボールを運んでみせて、
一時は逆転となるゴールまで。
素晴らしかったよ。




熊本。
前回対戦時と比べてチームが成熟しているのはよくわかったけど、
讃岐による対熊本仕様の守り方に対しては
打開策が用意されてなかったという印象。
ここまでの試合でこういった展開は無かったのかな。
黒木、小笠原、鈴木の足元にそれほど信頼が置けないようであれば、
最後尾の枚数を変える、
SBの高さを変える、
DHのポジショニング及び連携を考える、
(後半は森川が上村とデートしていたのだから、
 上村が左右や前に極端にポジショニングしてみて、  本来の上村の位置で中山が受けてみるとかね)
FWへのロングボールもある程度織り交ぜる…等が、
今後は必要になってくるだろうね。
(一時期の讃岐に対して書いたコメントとまったく同じなのね、これ)
(今日の熊本は、ホント、一時期の讃岐を観ているようだった)

守備に関しては、
今日の試合では後ろの選手のカウンター対応くらいしか言及するところが無いよね。
2失点目が顕著だけど、
中山も上村も守備はさほど…という選手なので、
小笠原と鈴木がどこに戻ればいいのか(戻って欲しいのか)
しっかり指示を出してあげるのが重要だと思う。





menufootballmatch